2004年01月30日

視界が『半落ち』!〜『三文役者の待ち時間』は30分で読もう

 今朝、映画『半落ち』出演中のベテラン女優KKKRNが左目失明というニュースが報じられた。隠しメッセージは「視界が『半落ち』」だ!いつも、シェケナ・ベイビー!!とかロックン・ロール!!とか叫んでいる夫は「オレも片方の目が見えねえんだ!オレも苦しいんだ!」と激励したという。流石だ!「リターナー」の名女優のご回復を祈ってやまない。
 
 『三文役者の待ち時間』(殿山泰司著 ちくま文庫)のブックガイドをおもろしんせつで大人気のサイト「popolism」http://alo.que.jp/poly/magazine/index.htmlで見つけ、いざなわれて書店に直行し、帰宅の車内で30分で読んだ。

 名バイ・プレイヤーの忙しさはハンパではないと思う。映画・テレビ・ラジオの現場、JAZZのLIVE、ゴールデン街と飛び回り、2ヵ月半で30冊のミステリー書評!(概算2.5日に1冊である)それも海外・国内有名無名かまわず赤川次郎、西村京太郎まで読んでいくのだからスゴイ!
 
 本書は評価眼の確かなミステリー評におさまらず、1970年代後半80年代前半の文化時評にもなっていて、その頃のサブ・カルチャー発信雑誌だった掲載誌の『話の特集』や『イメージ・フォーラム』を懐かしくも思いださせてくれる。(映画の作り手たちのバックステージ話もメイキング・フィルムのように愉しい)
 JAZZと映画の同時代的なクロス・オーヴァーぶりがまた心地よく、「ヒイヒイ」「ハフハフ」「ヒヒヒヒ」「クククク」などのアドリブのほか、「ジーチャン!!」「ニイチャン!!」というシャウトも響き、tomopoly氏の「アバンギャルドジャズと同じ変則的なリズムの文章は気持ちいいです」の的確なご指摘のように、変則ドライブ感に満ち満ちた圧倒的文圧!!(と情報量!!)ライバルは舞城王太郎と町田康!!
 「ETC」「ネーカ」「ビテレ」「ヒーコ」などのC調ウルトラ言文一致体は読みながら、どういう意味?と一瞬止まってしまうこと受け合いだ。

 自嘲と諧謔で揺れながらもハードボイルドの冒険小説を好み、採点もほとんどが80点以上とミステリーに対する穏やかな慈愛に満ちているのに心を打たれる。とりわけ、お気に召さぬ作品のよい点を探したりするところに。

 ご多忙なのに凄いミステリー読書量だ、と感心していたら、大学のときの恩師でミステリー作家の平石貴樹教授が「高校の頃は1日3冊は松本清張か高木彬光を読んでいた。これは人生より楽しいと思った」とインタビュー本で話していた。さすが、大学のゼミで700ページくらいあるトマス・ウルフの「天使よ、故郷を見よ」の原書をテクストに選ぶ人物は違う。なにせ「スラム・ダンク」全盛時に「スラム・ダンク・マーダー」という小説を書き上げてしまう男だ。「だれもがポオを愛していた」「フィリップ・マーロウより孤独」の作者でもある。

 ミステリー中毒というのは、もしかすると世界でもっとも幸福な病気かもしれませんな。

投稿者 鋭 : 2004年01月30日 21:24
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